個人的な賢人設定。未稿のものもあり。
基本的にはアルティマニア等の公式設定に沿いつつも、矛盾しない範囲で私の妄想が盛り込まれておりますのでご注意を。
そして、私の書いてきた作品群と内容はリンクしております。「エンディング後のヌヌザックの話(仮題)」と、以下の「獣王ロシオッティ」などは、その顕著な一例であります。




◆大地の顔ガイア
全てを知る、最古の賢人。
彼はファ・ディールの大地そのものであり、始原の刻から全てを見守ってきた。
たまさかにアニスによって顔と声を与えられたが、その意思はずっと地中──全てのものへと連なるファ・ディールの大地──にあって、生けとし生きるものらの足音や大地を割る根の伸びる音をただ静かに聴き、生けとし生きるものらの叫びや歓喜の様をただ穏やかに見守っている。

ガイアには、時間の流れを過去・未来などと区切る概念はない。
時の流れはただひとつの、連続した大きなうねりであり、彼にとっては全てが自明のことである。
地上の生けとし生きるものらのしがらみや意志…ファ・ディールという広大な大地の上に描かれる複雑な相関図を全て感得しているガイアには、人間のいうところの「未来」もわかるのである。いや、知っているといった方がよいか。
それゆえ、彼は瑠璃の問いにも「全ての答えをすでに持っておられる」とだけ答え、エレに「過去も未来もどこにもない」と言う。
瑠璃が自身の意志で未来を切り拓いていくことを既に知っており、また、エレが自分の思想に縛られているに過ぎないことも理解しているからである。
彼は住民達の問いかけに、真摯に、しかし簡潔に答える。彼にとって答えは既に自明だからである。
しかし、自己完結しまっているかのようなその答えは、その意図が質問者に伝わらないこともしばしばである。
けれど、ガイアは別段気にかけない。彼らがその後、己の道を進んでいくことを知っているからである。
ガイアに、住民や「運命」なるものをどうにかしようという考えは全くない。
彼はただ見守るのみで、住民の問いかけやその後の行方すらも、彼の予知していたできごとの一部に過ぎない。
「運命」を決められるのは、ガイアではなく彼ら──住民自身なのだ。

そして今日も、住民達のざわめきを感じながら、ガイアはうたた寝をしている。



◆詩人ポキール
鳥の姿をした語り部。
彼は、ガイアの意思の投影である。
大地なるガイアが青空を仰ぎ、全てを包むそののびやかさに思いを馳せた時、彼は生じた。
それゆえ、彼の容姿は大空を自由に飛び回る鳥の姿を象っており、彼の口は軽やかにさえずる鳥のくちばしを模している。
動くこと能わず、多くを語らないガイアの代わりに、ポキールは世界を巡り、然るべき時に然るべき道標を、然るべき者に示していく。

真言の使い手と言われた彼は、言葉の重みと意義を熟知している。
真言とは、人を酔わせる美辞麗句でもなく、魔力に満ちた呪文でもない。
強い意志を秘めた人の心の一端が形となって現れた、その力強さこそが、真言なのである。
真実は人それぞれ異なるが、それぞれの真実は覆いようもない輝きを秘めている。
そうした真実の発露が、力強い言葉──真言となるのである。
かつて、リクロット軍の聖騎士ラスダムナックが妖精から真言を会得したと言われるが、真言は、正確には学問や呪術のように体系的に学び取るものではなく、『知る』──もっといえば、世界を感じる──ことである。
己の内のなにがしかの真実を悟った時、人は真言の使い手となる。
死後、アーウィンとの邂逅において「私は宇宙」と宣言したマチルダのように。

ファ・ディールでは意志の強さがそのまま世界へと働きかける強さに繋がる。
イメージする力は、根源的な、そしてもっとも大きな可能性を秘めたパワーである。
しかしそれだけに実現するには大きなエネルギー、世界を再構築する力が要る。
その重要な媒体となるのが、言葉であり、それゆえ、ポキールは言葉を奏で続ける。

彼の言葉には非現実的と思われる部分があったり、なめらかな語りの中に埋もれた真実が看過されやすかったりするが、彼が虚言や詭弁を弄することは、一度もない。
そして、彼が言葉を投げかけるのは、彼の言葉を受け止めるに足ると認められた者だけである。
ポキールは、必要な時にしかその力──真言をふるわない。
力の意味を真に知る者は、力を弄ぶことはしない。

自由の象徴であるのびやかな翼は、彼の豊かな語り口そのもののようであり、にぎやかな色彩の衣装に漆黒の身を包むそのありさまは、華やかな言葉に包まれた重い真実を体現しているかのようである。
そして今日も、彼はファ・ディールの空と人の心の中を駆け巡る。
そんな彼の役割は、『ともに歩くこと』。
彼は常に、歩き出そうとする者の味方である。



◆海を渡る亀トート
…unknown…



◆奈落の王オールボン
…unknown…



◆獣王ロシオッティ
現在はジャングルの奥に住む、赤い獣の姿をした賢人。
ロシオッティはかつて、森に生まれ、森の生き物と親しんで育った素朴な若者だった。
彼の一族は街や村には定住せず、代々自然の中に身を置いて、自然と共に生きていく暮らしを営んできた。
また、彼の一族は、楽器を操る術は知らなかったが、精霊と交感することができたという。

ロシオッティは一族の中でも弓に秀でており、彼に射止められないものはなかったと言われている。
森に親しんで育ったロシオッティは、森人(エルフ)のように自然の気配の中に溶け込むことができ、己の気配を消して獲物に近づくことができた。
彼の引く弓は彼の腕のようにしなやかにしなり、彼の放つ矢は彼の澄んだまなざしがまっすぐ相手を射るように、瞬く間もなく標的を貫いた。
彼の弓は、他の者の弓が届かない、はるかな遠くの標的も楽々と射抜いた。

しかし、弓の名手であったことが、彼を俗世間の諍いへ巻き込んでいくことになる。
当時、妖精戦争が再び盛り返しており、アニュエラの支持を得ていたリクロット4世の軍勢と、魔導士達が付いた炎帝の軍勢の双方から、ロシオッティは戦力として請われた。
それまで素朴な暮らしに身を置いていたロシオッティには、全てが未曾有の出来事であり、また、事態を把握していく内に、組織の下で訓練された兵士とは異なる己の技が貴重なものであることを知り、懊悩する。
双方の軍勢の使者からの返事の催促に、ロシオッティは自ら選択することの重責に耐えかねて、双方に報酬の金額を提示させた。
どちらを選んでも、遺恨は残る。そう感じた彼は、報酬の多寡でどちらに付くか決めることにしたのだった。
そして、彼は炎帝の下に付いた。

炎帝はロシオッティに、セルヴァの暗殺を命じた。
当時、セルヴァは鷹の背に乗って戦場を飛び回り、豆一族や花人、草人などを指揮していた。
さまざまな生き物達を味方につけていたセルヴァを倒せるのは、自然を熟知していたロシオッティしかいなかったのだ。
ロシオッティは、ある時は夜陰を横切るセルヴァの気配を読み取り、またある時は柔らかな草を踏むセルヴァの音無き足音を感じ取りながら、常人の及びもつかない、静かな激しい追跡を続けた。
そしてついにはセルヴァを追い詰め、彼の心臓を射止めた。
しかし、その時ロシオッティは、セルヴァの配下についていた無数の豆一族に取り囲まれていた。
仕事はやり遂げた。そう思って観念したロシオッティに示されたのは、仇討ちの意志ではなく『賢人として共に歩む』ことだった。
己を取り囲む、無数のつぶらな瞳を見て、彼らから赦されたことを知ったロシオッティはがく然とする。
炎帝の下に付いた以上、今更そんなことはできないと断り、ロシオッティはその場を去る。

しかし、既に戦況は炎帝側にとって旗色の悪いものになっていた。
追い詰められた炎帝はヌヌザックに命じて火鱗のワームを召喚させたが、火の竜が吐いた炎はロシオッティの生まれ故郷であった森を焼いてしまう。
ロシオッティは、忌わしい炎が己を慈しんだ木々を消し炭にし、己の友であった生き物達を焼き焦がしてゆくのを、ただ見ていることしかできなかった。
呆然としていたロシオッティを炎の外へと導き、救ったのは、かつて彼を赦した豆一族だった。
ロシオッティは怒りと涙にくれていたが、豆一族達によってガイアの元へ導かれた。
その時ガイアと交わした会話をきっかけに、ロシオッティは新たに賢人として生きることを決意する。
「私は、最初からリクロット軍に味方すべきだったのです…」
「『すべきだった』という言葉は、意味がない。あなたは、いつでも自分で決めるしかない」
「…私は、選べなかった。いや、選ばなかった。その結末が、このありさまなのですね」

その後、妖精戦争は炎帝の死によって終結し、ロシオッティはジャングルの奥でひっそりと暮らした。
ある時、迷い込んできた獣にロシオッティは食べられてしまうが、その時の彼は笑顔だったという。
「私が欲しいなら、私を与えよう」
ロシオッティを食らった獣は、彼の知恵と記憶をそのまま受け継ぎ、『獣王』と呼ばれるようになった。
それが現在のロシオッティである。
彼の役割は『強き意志を守る』こと。
かつて、己の意志で選択しなかった彼は、赦されて賢者になった。そして後人に、己の意志を保つことを説く。



◆風の王セルヴァ
アーティファクト『風のベル』に姿を借りた、小さな賢人。
セルヴァは、元々は豆一族の内の一人だった。
アニュエラが生み出したと言われる豆一族の中で、一人だけ長身で華奢な体をしていたセルヴァは、好奇心も他の豆一族よりも抜きん出ていた。
セルヴァは鳥を駆って、アニュエラの元をよく訪れていた。
そして、人形を生み出していくアニュエラの技に見入り、また、人形をたびたび持ち出していた。

ある時、セルヴァは小さな炭焼き小屋に住む少女と知り合った。
少女は名をマグノリアといった。
マグノリアの父は炭焼きと狩りで生計を立てており、たびたび小屋を留守にしていた。
セルヴァは次第に、一人で父を待つ少女の遊び相手をするようになった。
ある時、セルヴァはアニュエラの元から一体の人形を持ち出し、それをマグノリアに贈った。
鮮やかに煌めく深紅の瞳を持った人形に、少女は瞳を輝かせた。
それを見たセルヴァも、満足の笑みをみせた。
しかし、セルヴァが小屋を去った後、小屋は火事で焼け落ちてしまう。
人形の瞳に埋め込まれていたのは、かつて大魔女アニスが生み出した火石だったのだ。
その火石が自然発火して、小屋を焼いたのだった。
少女は逃げ遅れて、焼け死んでしまったが、人形はそのまま残った。
惨状を目にしたセルヴァは、人形を抱きしめて泣いた。
そんなセルヴァをアニュエラは責めずに、己のいいつけをこれからは守るよう、静かに諭した。
もう勝手に人形を持ち出さないと約束したセルヴァに、アニュエラはうなずいてみせて、人形を受け取った。
アニュエラがひとなですると、人形は意思を持って動き出し、マグノリアと名のった。
アニュエラが、亡くなった少女の魂を人形に宿らせたのだった。
このことがあって以来、セルヴァは生き物の中でも殊に子どもに心を寄せるようになった。
子どもや小さな生き物…事態を大きく揺さぶり動かしていく大人達の中にあって、事態の周辺にいるささやかな存在を彼は慈しむようになる。
やがて、彼は鷹の背に乗って鳥の群れを自在に操り、豆一族や花人、草人など、小さな生き物達を指揮するようになる。
その様を見たアニュエラによって、セルヴァは後に賢人と認定されることとなる。

その後、マグノリアが火石を狙う魔導士に連れ去られたことをきっかけに妖精戦争がまた勃発し、セルヴァは、アニュエラと共に戦った。
敵方の魔導士達が召喚した雷鱗のワームは、豆一族が洞窟に誘い込んで息の根を止めた。その指揮を取ったのはセルヴァだった。

しかし、その後の炎帝襲来の折に、セルヴァは敵方の一人の戦士によって射止められてしまう。
だが、それは彼の計算の範疇のことだった。
独自の情報網を持つセルヴァは、炎帝が雇い入れた弓の名人が、自然を愛する者であることを知り、また、その戦争参加が彼の本心によるものではないことも知った。
それゆえ、セルヴァは戦争のしがらみを越えて彼を自分達の仲間に招き入れることにしたのだった。
そして、彼が指揮していた豆一族達に、あらかじめそのことを伝え置いた。
かつて、少女を己の過失で死なせてしまったことをアニュエラに赦されたセルヴァは、己を射ろうとつけ狙う戦士ロシオッティを赦したのだ。
ロシオッティの翻意の後、アニュエラによってセルヴァの魂はアーティファクト『風のベル』に宿され、セルヴァは復活する。
ロシオッティに射られた亡骸は、矢が刺さった姿のままで棺に納められ、今も聖域で眠っているという。

セルヴァの新しい体は、鳥の背を借りずとも空に浮くことができ、風が吹くと、涼やかな音をたてた。
今日も、セルヴァは風の在るところに身を置き、世界のたたずまいを俯瞰している。
そんな彼の役割は、『道を示す』こと。
かつて、アニュエラによって赦され、正されたセルヴァは、人の過ちを赦し、行くべき道標を示している。



◆傀儡師アニュエラ(既に死亡、ゲーム中には登場しない)
…unknown…


戻る