コンゴの物語

《発端》

 それはウンディーネ曜日のこと、夜の街角には水影のような光がいつものように降りそそいでいた。
 アナグマ達は、今日も相変わらず鉱山を抜け出し、にぎやかな音楽の鳴り響くこの酒場へ来ている。酒場には相変わらずのマスター、そしてある人の言葉によって心に火をともされたジャグラー・カペラ、そしてその相棒のディドルと、いつもの面々だ。
 テーブルの上には、なんともいえない形をしたランプが置かれている。これは、最近アナグマ達がこの街で、お陽さまの色した頭の「ぐまぐまま」から手にいれたものだ。
 1000ルクは、コンゴからもらう日給の十日分に相当する。でも、それを払っても惜しくないほどの魅力が、この「んぐんま」にはあった。
 不規則なそのラインはゆるやかな旋律を思わせ、呼吸するように強くなったり弱くなったりするその不思議な色の光は、軽やかな旋律を思わせた。アナグマ達には、この「んぐんま」がまさしく「ぐーまー」を奏でているように感じられたのだ。
 そんなわけで、今日もこのお気に入りの「んぐんま」はちゃんとテーブルに据えられている。
 暗闇。お月さまにお星さま。にぎやかな音楽。そして「んぐんま」。お気に入りに囲まれ、アナグマ達は楽しいひとときを謳歌していた。

   ッドドドドドッ───!!

 そんなひとときを破る、激しい物音が響いてくる。とたんに、アナグマ達は飛び上がる。聞き慣れた、あの足音は…
「コラッ、オマエら、またこんなところで油を売りおって!」
「まっ、まぐま ままぐ〜」(なんにも、売ってないよ〜)
「言い訳なんか、聞かんぞ! 休憩時間はもう終わっておる、こうしている間もプッツイ様はお一人で待っておられるのだ、さっさと持ち場につくがよいっ!」
「まぁまぁ、少しぐらい、いいじゃありませんか…」

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