惨禍

《語り部》

マナの木が焼け落ちて以来、
人は全てを盲目的に求め、
或いは全てを諦め切った

強欲と無気力の支配する世界

ある時ある処に存在した
たった一人の心の歪みが、
大いなる災いをまた一つ生み出した

そして幾多の悲劇がまた、
生み出されては消えていった
時代の波に呑まれて

いつの世も、最も虐げられるのは
名も無き無数の民達

彼らの叫びは、誰にも聞こえない

そして、
いつの世も、尽きせぬ生命力を漲らせ、
春に再び芽吹く雑草のように
真っ先に甦るのも、
名も無き無数の民達

彼らの喜び溢れる笑い声も、誰にも聞こえない

しかし、彼らの悲しみの声が
時代を突き動かし、
彼らの豊かな笑い声が
時代を再び造り上げてゆく

聞け、名も無き民の声無き思いを

聞こえない声が時空を超え、
多くの人に連なり、
それとは知らずに
時代を切り開いてゆく

声無き思いが言葉を超え、
ただ一人の胸を揺さぶり、
そしていつしか、
時代を揺るがしてゆく

時代を紡ぐのは、
名も無き民の
いつか放ったただ一言

それだけで、
時代は変わりゆく

それだけが、
時代を変える力

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