或るプロローグ
《かぎろい》
その時、男はなぜかふいに友のことを思い出した。
私は、彼女の核を傷つけた…。もう、王に吸収してもらうのは無理だろう、ひびが入ったであろうから。
「……王、珠には芯があるとおっしゃっていましたね。芯とは、いったい何なのですか?」
「さまざまだ。何でもよいのだ、芯は。砂一粒からでも珠は形成される」
「そうですか…」
では、彼女の芯は何だったのだろうか?
そんな思いがふと胸をよぎったが、すぐに消えていった。
なすべきことをようやく見つけた彼の瞳は輝き出していた。
この後、彼、アレックスことアレクサンドルは、その手を同胞の血で染め上げてゆくことになる。
そして、友の核のひびから生じたものが何であったかをも、知ることになる。
END
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この話はアルティマニア発売前に書いたため、宝石王の設定や二人の出会いなどは
公式と異なってしまっていますが、個人的にお気に入りの話です。
プレイ当時、宝石王の性格やサンドラに協力する動機がとても興味深く感じられたため、
彼の思想などを掘り下げてみたいという欲求の元にこれを書き上げました。
サンドラをたしなめる姿勢や数少ないその言葉の端々から、
彼は彼なりに、己の住まう世界の美しさを讃えていたのだと窺い知れます。
たとえアレクサンドルが憎しみの炎に包まれていても、
彼と彼の目の前に広がる世界は、美しい。