蝶・きままWJ感想

■23号-デスノ 05/09 (火)
DEATH NOTE page.107:幕 ※センターカラー
5/15コメント欄でいただいた修正情報を追記。(次号発売日ですが、これを書いている時点ではまだ次号は読んでいません)

■西尾維新×DEATH NOTE/アナザーノート/ロサンゼルスBB連続殺人事件/完全オリジナル小説
おおっ、ノベライズですか! しかも「あなたはLの伝説を見る!!」と来たら、Lファンとしては読まないわけにはいくまい。映画は観ない(というか観られない)が、小説ならネットで発注できます。プロ作家がデスノ(特にL!)をどうノベライズ化するか、その手腕にも興味津々。

■不動のニア
「ああ…書こう」とページを繰るリュークを見てなお、微動だにしないニアに感動。「ざぁまぁーみろ、ニア」と小学生みたいに吠えている月の無様さと相まって、ニアがどんどんすごい人物に見えてくる。昔、Lの死亡報告にも微動だにしなかったよな、たしか。その鋼のような精神に感服。

■リュークが決着をつけてしまいました
月の名前を書いた理由が「牢獄に入れられたんじゃ、いつ死ぬかわからない。待っているのも面倒だ」というのが、たいそう笑えます。
一時期は月の手駒に堕したかと思われたリュークだが、ちゃんと自由気ままな死神のままでした。
ただ、ニアが世間の動向に配慮し、なおかつ、キラの『殺人によって悪人を裁く』という手段を否定する為に、あくまで『月を牢獄に死ぬまで入れておくだけ』としたせっかくの決定がパーになったのが惜しいが、代わりに、月が他人にさんざん突きつけてきた死の恐怖というものを存分に味わったので、とりあえず溜飲は下りました。
本当は月が裁判にかけられて、全世界から非難轟々浴びせられてほしかったが、贅沢はいうまい。

■人間なら当たり前のはずの生への執着。…のはずだがこれは駄目だろう。
「い、いやだ、死にたくない。牢獄もいやだ!!」って、なんてわがままなんだ。仮にリュークが月の名前をその場で書かなかった場合は牢獄で生きながらえられただろうが、その牢獄も「いやだ」って、あんた…。絶句。

■一般人の代表/人類の未来
死を突きつけられた月に対して、「月くん………」と思わず歩み寄ろうとする松田。
彼はこの作品の登場人物の中において、深く考えることのない軽率な人物として描かれがちだったが、同時に、この世界における一般人の映し絵としても、ずっと描かれてきた。(キラが絶対に間違いだとは言い切れない、という彼の揺らぎも、その表れである。)
月がキラだったと知った時の怒り、そして死の恐怖にさらされている月への同情。私情に揺り動かされてしまう点では彼は警官としては失格だろうが、人間らしさを遠くどこかへ置き去りにしてしまった月や魅上たち、そして己の死の瀬戸際にあってすら動じないニアといった超人的な面子の中において、感情豊かな、いちばん人間らしい存在であり、この物語の非現実性を緩和する重要な存在でもあった。
この世の人間の大多数はおそらく、松田のような人達である。だからこそ、キラに銃を向けたり同情を寄せたりと、揺らぎをみせる平凡な松田とその背後に透けてみえる人類に、この世界の未来と希望を見出せます。
キラが消え、世界がいったん混沌の渦に巻き込まれかけても、人類は自滅することなく、徐々にバランスを取り戻してゆくことでしょう。人間は、変われる。(そして、月は最後まで変われなかった。)
…で、松田には「月くんはキラと刺し違えて殉職した」という報告を引っさげて夜神家に赴いてもらい、ゆくゆくは『総一郎と月を失った』という痛みを共有する者同士として粧裕とゴールインしてほしい。この殺伐とした世界で、ちょっとは幸せなカップルというものを拝んでみたいですよ! レイ=ペンバーと南空ナオミは婚姻前に死んでしまったし、月とミサは結局こんなことになっちゃったし。…そういえば、ミサはどうなるんだろう? 死神に愛された数奇な運命を持つ彼女の未来は果たして如何に。

■死んだ後にいくところ
「天国も地獄もない。生前、何をしようが死んだ奴のいくところは同じ。死は平等だ」
っておい!! 死神や死神界が存在するくせに天国も地獄もないってどういうことさ!
この結末にはど肝を抜かれたし、この物語の締めくくり方としては秀逸だとは思うが、この設定には納得がいかない。
デスノートを使った者だけが無の世界に帰すならまだしも、何の罪も無くノートも使っていない南空ナオミや宇生田までそうなってしまうというのが、どうにも我慢ならない。うがー!

■リュークが嘘をついている可能性
…と、ちゃぶ台返しはこの辺までにして、ちょっとリュークの台詞をうがってみる。
回想シーンの台詞を起こしてみると、以下の通り。
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月「単に、天国も地獄もないってことだろ?」
リューク「!」「………………」「おまえには本当に驚かされるな。人間って奴は皆、天国や地獄を本気で信じ切っていると思っていたが」「ああ、お前の言う通り、天国も地獄もない(後略)」
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リュークが月の台詞にびっくりし、応えるまでに、しばらく沈黙の間がある。この間は、『…天国や地獄はちゃんと存在するし、人間だって皆そう信じ込んでいると思っていたが、存在しないと簡単に割り切ってしまえる奴もいたとはな』という驚きだと解釈できないだろうか。
リュークは、夜神総一郎が死んだ時に『ノートを使った人間は不幸になるか…。まぁ、総一郎は使った訳じゃないし、息子がキラじゃないと信じて天国に行けただけでも幸せか…』(page.74:熱演)と考えている。
少なくとも、天国は存在するのだ。

5/15:ここに追記するのが遅くなってしまいましたが、5/10に、上記のリュークの台詞が単行本では「逝けただけでも幸せか…」に修正されているとの情報をいただきました。よって、上の根拠とした部分にも消し線をかけておきます。
まだ単行本が手元にないので未確認ですが、今話の流れからしても、天国と地獄がそもそも存在しないというのは確定のようです。うう、ショックだ。

そして、天国が存在しないという事実とは別に、今回の単行本での修正自体が後だしジャンケンのようで納得がいきません。
単行本は買わずに本誌だけを通読している読者もいるだろうし、リュークの「天国」発言と今回の「天国も地獄もない」という記述の矛盾に、私と同様に引っかかった人もいるはず。この重大な修正に関して、単行本ではなく誌上で何の断りもおわびもないとすると、不満が残ります。せっかく有終の美を飾れそうなだけに、この点は非常に残念です。

この想定が正しければ、リュークは月にデスノートを渡した時、月が「天国も地獄もない」と言ったのを受けて、わざと月に『天国も地獄も元々ない。死んだら全員、無だ』と嘘の設定を刷り込んで、いずれ来たる月の死亡場面で月が死の恐怖におびえるのを楽しもうとしたのではなかろうか。
“楽しむ”ためだけにノートを地上界に落としたリュークなら、そういういたずら心を起こすことも、十分にありえる。
月に嘘をついたところで、実際に月の魂の行方が左右されてしまうわけではないし、死んで後に月がまだ魂として存在し得た時に『リュークの奴、嘘をついたなぁ!』と地団駄踏んだところでリュークは痛くも痒くもない。

■デスノートを使った者の末路
ただ、上記の想定が正しいとしても、デスノートを使った者の末路は、月に切り返される前の「デスノートを使った人間が天国や地獄に行けると思うな」というリュークの台詞で確定済みであろう。
『ある魂に天国や地獄など通常の死後の世界が用意されていないとすれば、その魂は消滅するだけ』というのが妥当な結論だろうし(最も、月や私が宗教を信じてないからそういう発想が普通に出てくるだけだろうが)、ノートを使った月の魂が無に帰ったという結末は確定したと私は考えている。
(以前に書き飛ばした妄想SSで、デスノートを使用したメロの魂の行方として「魂そのものが跡形もなくすり潰されてしまうのかもしれない」という想定をしたのも、同様の理由から。他にも理由がありますが、長くなるので割愛。)

■無辜の者の魂の行方/少年誌として
そして私は、夜神総一郎の魂が天国へ行ったように、月に殺されていった無辜の者らにも魂の行く末が用意されていると願いたい。火口やメロは仕方ないにしても、ナオミや宇生田には消滅してほしくない。こんなことを未練がましく書くのも、これが少年漫画だからです。
正直言って、「人間はいつか死ぬ。死んだ後にいくところは、無である。」というラストの漆黒のページを子どもには見せたくない。死後は全員無に帰すという身もフタもない形で締めるのなら、青年誌辺りで連載してほしかったです。実際にこれを読んでいる子ども達は、私みたいに「リュークが嘘ついてるんじゃないの?」とうがつこともないだろうし。ぬー。
子どもに読ませる漫画として、この結末は、エロや猟奇的表現よりもある意味、エグい。死の恐怖は、数ある恐怖の中でも最も普遍的で、身近で、底知れないものなのだから。
私自身も宗教は信じてないし、死後の世界も想定していないが、こういう突きつけ方は、子どもにはしんどいと思う。
まぁ、当の子ども達は、こんなネームぎっちぎちで真面目に読んでないと設定や状況がすぐにわからなくなるような漫画はまともに読んでいないのかもしれないが。

■L
さて、次回のタイトルは「完」であるため、おそらくそれで完結(奇しくも108話目であるが、この数字は狙ってやったのだろうか?)するでしょう。
で、L死んでない同盟の主催者としては、次回のラストで、とある病院の光景が描写され、看護士さんがもぬけの空のベッドを見て「あら、エ×××さんは?」と辺りを見回すような光景を挿入してもらいたいと夢見ております。(Mで始まる某漫画のラストみたいな感じで。)
Lが生きている可能性が、それこそ泥門が神龍寺に勝つ可能性よりもずーっと低いのは、承知の上。
でも、話はまだ終っていません。月は潰えたが、L関連の伏線はまだ、回収されていません。
最後まで、待ちますよ!

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