コンゴの物語
《詩集》
「ん? あなたは本がお好きなのですか?」
コンゴは思考を破られ、そしてドキッとする。
「いや、本じゃない。これは、ワシの詩集だ…」
「そうですか! すばらしいですね、どんなものを書かれているのですか?」
「…別に。詩などつまらんからな」
つい、ツンツン頭に対して言ったのと同じような虚勢を張ってしまう。
「『詩人はどんな人にでもなれる』…賢人ポキールの言葉だそうですよ。ほら、あそこで見事な曲芸を披露している、彼はカペラという者ですが、彼もまた、その言葉に感化された者の一人です」
(なぬっ、あのサルが!?)
自分のゴリラのような風貌を棚に上げて、コンゴはそう思った。
「だから、あなたも詩人になれるのです、いや、もう書いておられるのですから、立派な詩人ですね」
「…!!」
プッツイ様に神を見出した時以来の、怒濤のような感慨の波が彼を襲った。
「…友よ!」
いつしか、コンゴはマスターの手を両手でガッチリ握りしめていた。
「誰も、誰もワシの心をわかってくれないのだ、ワシは…」
「よければ、読ませてもらえませんか?」
「もちろんだとも!」
「では…」
差し出された詩集を手に取るマスター。ページがめくられる。
お友達がいっぱい
ねぇ、お星様、
遠くのお空で輝くあなた、
あなたのお顔はどんなかしら
笑顔なの?
それとも泣いているの?
ふるえているのは風のせい?
それともこわいからなの?
そう、お空は真っ暗
でも、あなたはひとりぼっちじゃないじゃない
まわりには、お友達がいっぱいいるものね
きっと、泣いてなんかいないわね
涙なんて、うれしい時に流すもの
あなたのお顔はきっと、
笑顔ね
コンゴとアナグマ達がドキドキしながら見守る中、詩集をぱたんと閉じてマスターは顔を上げた。